「FHIR 対応は要件」で止まっていた話の実装版。検査データを HL7 FHIR R4(JP Core / JP-CLINS)と JLAC11 で相互運用可能にする。リソース設計、JLAC10→JLAC11 とローカルコードの名寄せ、HL7 v2 からの変換、電子カルテ情報共有サービスへの接続まで、How に踏み込む。
シリーズ②は「標準規格対応は要件」「相互運用は主導権の分水嶺」と書いた。だがどう実装するかは全編で空白だった。本編がその実装版。検査データを国際標準 HL7 FHIR と国内コード JLAC で他システムが解釈できる形にし、電子カルテ情報共有サービスに繋ぐところまでを扱う。
相互運用の核心は「データの意味を、相手のシステムにも分かる形で持つ」こと。自院ローカルの検査コードや独自フォーマットのままでは、繋いでも意味が伝わらない。FHIR が構造(どう運ぶか)、JLAC が意味(何の検査か)を担う——この2つを揃えて初めて相互運用になる。
本編は「深掘り編」。②が「標準対応は要件」(Why)、本編が「どう実装するか」(How)、移行プレイブックが「いつ変換を仕込むか」(When)、データインテグリティ編が「変換しても真正性を保つ」(Integrity)に接続する。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 臨床検査データの相互運用実装:HL7 FHIR R4(JP Core / JP-CLINS)のリソース設計、JLAC10→JLAC11 とローカルコードの名寄せ、HL7 v2 からの変換、電子カルテ情報共有サービスへの接続の考え方。 |
| 対象外 | ① 標準対応がなぜ要件か(法規制・調達)→ シリーズ②。② 変換をいつ仕込むか(移行の段取り)→ 移行プレイブック。③ 変換後も真正性を保つ方法 → データインテグリティ編。④ API 基盤のセキュア実装(OAuth/認可の作り込み)→ ④。⑤ 製品個別のマッピング表(ベンダー依存)。 |
相互運用は「構造」と「意味」の両輪。どちらが欠けても繋がらない。本編は2軸で押さえる。
この2軸で「運ぶ器(FHIR)」と「中身の意味(コード)」を揃える。実装の残リスクは「①追加技術/②運用/③契約・SLA/④受容」の4分類で引き取る。
| 標準 | 版・主体 | 役割 |
|---|---|---|
| HL7 FHIR | R4(4.0.1)/HL7 International | データ交換の国際標準。REST API + JSON。日本の医療DXはこの R4 を採用 |
| JP Core 実装ガイド | v1.2.0-a(2025-01、FHIR R4 ベース)/JAMI | FHIR を日本の臨床に合わせたプロファイル集。検査では Observation/DiagnosticReport/Specimen 等を規定 |
| JP-CLINS 実装ガイド | v1.11.0/jpfhir.jp | 電子カルテ情報共有サービス向け FHIR 実装ガイド(2文書5情報+患者サマリー)。共有のための具体仕様 |
| JLAC11(臨床検査項目分類コード) | 日本臨床検査医学会/厚労省推奨 | 「何の検査か」を一意に表す国内コード。データ統合・2次利用向け。JLAC10(HS014 臨床検査マスターで定着)と併行運用中 |
| UCUM | 国際 | 検査値の単位を機械可読に(mg/dL 等)。FHIR の Quantity で使用 |
| (参考)HL7 v2.5 / ASTM | 従来規格 | 装置 IF・既存連携で広く使用。FHIR への変換元になる |
臨床検査は主に次の3リソースで表現する(JP Core プロファイルに準拠)。
| リソース | 表すもの | 検査での要点 |
|---|---|---|
| DiagnosticReport | 検査報告全体(オーダ単位の報告) | 報告のまとまり。結果(Observation)への参照、検体(Specimen)への参照、報告日時、ステータス(final/preliminary 等)を持つ |
| Observation | 個々の検査結果項目 | 1項目1リソース。code に JLAC(何の検査か)、value に結果(数値+UCUM 単位、または定性値)、基準範囲、判定(H/L 等) |
| Specimen | 検体 | 検体種別(血清・尿・組織等)、採取日時、検体 ID。DiagnosticReport/Observation から参照 |
国の電子カルテ情報共有サービス(2025年度稼働)は、医療機関間で診療情報を HL7 FHIR で共有する仕組み。検査情報もここに乗る。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 共有の単位 | 厚労省は「3文書6情報」として打ち出し。FHIR 実装ガイド JP-CLINS は「2文書5情報+患者サマリー」として整備(健診結果報告書は健診 FHIR で別建て)。6情報に検査情報が含まれる |
| 方式 | HL7 FHIR(REST API・JSON)。自院システムの診療情報を FHIR に変換して連携 |
| 検査の載せ方 | 検査情報を JP-CLINS / JP Core のプロファイルに沿って Observation 等で表現。コードは JLAC、単位は UCUM |
| 認可・セキュリティ | API 接続は OAuth 2.0 等の認可、通信暗号化。具体実装は④セキュア実装へ |
本シリーズは、医療情報システムの開発・クラウド化を手がける X Harumi が、公的な一次資料を根拠条項まで遡って再整理したものです。AI 活用支援・業務効率化・DX 推進・システム開発を提供しています。